実体験に基づく違和感や危機感から
まずアンコンシャス・バイアスに着手した
―D&Iの中でもアンコンシャス・バイアスに注目したのはなぜでしょうか。
高橋様
私がD&Iに関心を持つようになったきっかけは、2019年に産休・育休から復帰した経験です。女性が子育てをしながら働くことに対しての難しさを感じたり、モヤモヤした気持ちを持ったりする実体験からでした。関連の本を読む中でD&Iに辿り着き、D&Iを勉強する過程でアンコンシャス・バイアスについて知りました。
山口様
ダイバーシティを学ぶ上で、すべての前提にアンコンシャス・バイアスというものがあると認識しました。そのためアンコンシャス・バイアスには、まず初めに着手すべきだと考えたのです。また、個人的には、若手・中堅人材の離職に危機感を覚えていたということも背景にあります。
我々のビジネスでは、多数のステークホルダーをまとめることが必要です。そのため各方面に対する配慮が必要となり、高いコミュニケーション能力が求められます。しかし、傾聴力や調整力の高い人材ほど、場の空気を読むスキルに長けているため、アンコンシャス・バイアスが生み出す同調圧力に弱い、もしくは図らずも同じことを相手に求めて同調圧力を生み出す側にまわってしまう、というデメリットがあるのではないかという懸念を抱いていました。
ビジネス上で必要な能力が、一方で多様な意見を生かしにくい状態に向けて働いてしまっていたなら、かつそのジレンマに息苦しさを覚える人が居たなら、離職につながるのではないかと考えました。
……これは仮説でしかないのですが、実際にメスを入れてみたい部分でした。
―具体的にはどんな取り組みをされたのか、お聞かせください
山口様
2022年の10月に管理職層に対してアンコンシャス・バイアス・トレーニングを始め、2023年度内に一般社員や経営層にも広げました。トレーニングの機会を全社員に提供した形です。
ポニーキャニオン様お取組み事例
―アンコンシャス・バイアスに取り組むにあたって、KPIも定められていますね。
山口様
KPI(業績を評価し、管理するための定量的な指標)は、社員に対して多様性および多様性を包含する(D&I)環境があるかを問う質問を設定し、賛成を示した割合から達成率を見るように設定しています。
多様性と包含(D&I)環境を整える前提として、アンコンシャス・バイアスを自覚したり、意識してコントロールしたりすることが大切だという定義付けからです。アンコンシャス・バイアスは、D&IのKPI達成のためのアクションプランの1つという位置付けです。
高橋様
D&Iの領域は数値化が難しく、KPIを出すことに苦労していました。達成までの距離を測るためには数値が必要だと考えていたところ、ANGLE※ではまさにその「数値」が可視化できるということで導入に踏み切りました。(※e-Learningツール:チェンジウェーブグループ提供)
アンコンシャス・バイアスについては、それまで考えたこともない人もいれば、自分で興味を持って調べていた人もいると思います。社員それぞれに違うはずの現在地を、同じ尺度で知ることができるのは良いと思います。