アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)を 測定するテスト 日本向けIATとは
企業が変革する時、個人のポテンシャルを高めようとする時、
それを阻むもののひとつはアンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)ではないか?
チェンジウェーブは組織変革や人材育成に携わる中でそう考えるようになり、アンコンシャス・バイアス対処を学ぶ eラーニングツール「ANGLE」を自社開発しました。
ANGLEでは、アンコンシャス・バイアスを単に学ぶだけでなく行動の変化につながるよう、3つのステップを設けていますが、そのステップで重要な位置を占めるのが受講者のアンコンシャス・バイアスを測定し、数値化するIATというテストです。
受講後のアンケートでも
「数値化され、客観視できたことで納得感があった」
「IATがコンテンツの中で最も印象に残っている」
という声を多くいただいています。
では、「無意識」なものを測るとはどういうことなのか、ご紹介します。
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アンコンシャス・バイアスの測り方
アンコンシャス・バイアスを測る方法として「IAT(Implicit Association Test)」がワシントン大学とハーバード大学の研究によって発表され(Greenwald et al., 1998)、その信頼性は複数の研究で検証されてきました。
それ以前は、バイアスを測る方法として、「Self-report measures」と呼ばれる自己申告によって、顕在化しているバイアスを測るものが主流でした。しかし、それでは意識の外にある考えや気持ちを正しく捉えることができません。
その制約を越え、アンコンシャス・バイアスを測るために、心理学者は「パフォーマンスベースの手法」を開発してきました。社会的に好ましいと思われる回答をする余地を被験者に与えず、被験者の行動からアンコンシャス・バイアスを測ろうとするものです。
まず最初に開発されたアンコンシャス・バイアス計測方法は「SPT (Sequential Priming Tasks)」と呼ばれるものでした。これは、被験者に先行刺激を与え、そのあとにアンコンシャス・バイアスを測りたい対象についての刺激を与えます。先行刺激によって活性化されたメンタルの状態と一致している方が、対象についての刺激にも素早く反応できる、という仮説をもとに作られました。
最も広く使用されている手法ですが、その信頼性については異論も出ています。
そのような中、1998年に発表されたのが「IAT(Implicit Association Test)」だったのです。
IATの仕組み
IATでは、2つの属性のターゲットに対する異なる連想を測り、計測データとして示すことができます。「アンコンシャス・バイアスを測りたい対象の言葉」と「ある属性の特徴についての言葉」の間の連想を測ります。
たとえば「花の名前」「虫の名前」が次々に画面上に表示され、それらの言葉を「感じの良い言葉&花」あるいは「感じの悪い言葉&虫」のどちらか、次に「感じの悪い言葉&花」あるいは「感じの良い言葉&虫」のどちらかに分類する作業を行います。
一般的に「花の名前」と「感じの良い言葉」、「虫の名前」と「感じの悪い言葉」の間の連想が強いため、後者の「感じの悪い言葉&花」「感じの良い言葉&虫」に、分類する方が、時間がかかります。
このようにIATでは、表示される2つの言葉の連想が一致するとき、キーを押すスピードが速くなる、という原理を活用しています。アンコンシャス・バイアスを測りたい対象の言葉に対する無意識の連想を測ることができ、意識的には持っていないと認識しているバイアスも明らかになるといわれています。
たとえば、以下の図のAでは、「男性=仕事」「女性=家庭」の連想が強い場合、「Boss」という仕事を連想する言葉は、右側に分類することは容易にできます。ところが、Bでは仕事を連想する「Boss」は女性に紐づきにくいため、Aと比較して分類の反応が遅くなってしまいます。
IATの信頼性と進化
IATを使用した実験結果では、アンコンシャス・バイアスと顕在化しているバイアスの違いが示され、IATでアンコンシャス・バイアスを測定することができることが明らかになりました。
また、複数の実験により、IATは統計的にみても内的整合性があり信頼性が高い尺度であることが示され、最も卓越した手法だといわれています。
また、スタンダードなIATを改良したり、前述のSPTとIATを組み合わせた「AMP (Affective Misattribution Procedure)」が開発されたりするなど、アンコンシャス・バイアスを測るのに最も適した方法であるとされたIATの進化は続いています。
日本向けIATの開発
アンコンシャス・バイアスを測るのにIATが最も適した方法であるとしても、海外で開発されたものをそのまま持ってきたとして、十分な成果が得られるだろうか?
チェンジウェーブでは、IATの国内第一人者、フェリス女学院大学の潮村公弘教授に監修を依頼し、日本向けのIATを独自開発することに成功しました。
現在ANGLEで提供しているIATでは、日本で暮らす人によく見られるアンコンシャス・バイアスを心理学研究と同じレベルの正確さで測定できるようにしています。
ANGLE IATテスト結果表事例
行動変化に対するIATの影響
チェンジウェーブでは、ANGLEの一部受講者に対して受講半年後~1年後にアンケート調査を行いました。その結果を見ると「アンコンシャス・バイアスの可視化が行動変化に影響した」という回答が得られています。また、コンテンツのうち、最も受講者に印象強く残っているのもIATでした。
インプット(知識等の学習)と比較しても、IATの方が印象に残ったという回答が多く、アンコンシャス・バイアスは概念よりも計測データを示すことで、行動変化につながるという結果が得られました。
ANGLE受講者アンケートより
ANGLEのIATについてより詳しくご覧になりたい方は、下記お役立ち資料やANGLE商品説明・企業事例セミナーをご利用ください。
■参考文献
Gawronski, B., & Hahn, A. (2019) Implicit measures: Procedures, use, and interpretation. In H. Blanton, J. M. LaCroix, & G. D. Webster (Eds.), Frontiers of social psychology. Measurement in social psychology (p. 29–55). Routledge/Taylor & Francis Group.
Greenwald, A.G., et al. (1998) Measuring Individual Differences in Implicit Cognition:
The Implicit Association Test, Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 74, No.6, p. 1464-1480