無意識の年齢バイアスを乗り越え シニア層の活躍につなげる
チェンジウェーブでは、アンコンシャス・バイアスのeラーニングツール「ANGLE」を提供しています。
ANGLEの特徴は、アンコンシャス(=無意識)であるがゆえに自覚しにくい受講者のバイアスを、定量データで数値化すること。「自分にもある」「こんなところにバイアスが出る」と認識していただき、「自分ごと」になることで行動が変化するよう、設計しています。
本レポートでは、ANGLE受講者6万人のデータをもとに、シニア活躍を阻むアンコンシャス・バイアスについて考えます。
シニアバイアス連載記事
No.1 シニア層の活躍を阻む3つのアンコンシャスバイアス
No.2 無意識の年齢バイアスを乗り越え シニア層の活躍につなげる ※本記事はこちら
No.3 ベテラン活用・企業の取り組み ~ダイキン工業様 事例紹介~
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「シニア」と呼ばれたくない
「シニア」とは何歳からを指し、どんなイメージを持つでしょうか。
人々が無意識のうちに持つ思い込み、アンコンシャス・バイアス。そのバイアスは年齢に対してもあり、性別バイアスと並んで大きな課題です。「エイジズム」と呼ばれる年齢差別は、WHOが警鐘を鳴らすほどです。
「若い方がいい」「シニアは頭が固そう」など、“若い=ポジティブ、シニア=ネガティブ”なイメージを持ってしまうシニアへの年齢バイアスについては、前回レポート(※)で取り上げました。
例えば「シニアはITが苦手」などというのもシニアバイアスですが、実際のところ、70歳代のスマートフォン所有率は6割を超えようとしています。60歳代でデジタルツールを駆使し、企業でイキイキと働いている人もたくさんいます。それでも「シニア」と言うと、一括りにネガティブな印象を持たれがちです。
では、今回はそのバイアスにどう対処していくのか、約6万人のANGLE受講者の回答、アクションから考えてみます。
ANGLEの自由記述欄には、多くの方が
シニアに対して「ITに弱い、体力や地力の衰えがある、頑固」
若手に対して「ITに強い、柔軟性や成長性がある」
などのアンコンシャス・バイアス(思いこみ、決めつけ、先入観)を持っていたと気づいた、とコメントしています。
自分はこう感じている、と言語化することは、行動が変わるきっかけになります。
シニア層は、新たな役割を待っている
多くの人が気づかないうちに抱いていた「シニアは頑固で柔軟性がない」というバイアス。
ANGLEでの気づきをもとに行動を変えた例を、管理職版の受講者コメントからご紹介します。
「(部下になったシニアに)経験を活かしつつも、これまでとは異なる新たな役割や業務を提案してみました。すると、これまでの役割に固執せず柔軟に対応し、予想以上にイキイキと取り組んでくれるようになりました」
「以前は、50代がキャリアの上限のように思い込んでいて、それ以上新たなことを期待するのは良くないと思っていました。しかし、それがバイアスであると気づき、50代のメンバーに新規事業を任せたら、豊富なアイデアと人脈を使って新規事業を具現化させたのです。若手もITなどのスキルで貢献するなど、相互に刺激し合ってチーム全体としても良い効果を得ることができました」
この例に挙げられた50代のメンバーは、これまで培った豊富な人脈、人間関係を活かす場を与えられたことで、社内を横断的につなぐ役割を果たしたと言えます。
「シニアはITが苦手だと思い込んでいました。
しかし、思い切ってそれぞれの人に聞いてみたところ、これまで経験のあることがデジタルに置き換わっただけの場合、すぐに理解して活用できる人や、もっと新しいスキルを学びたい人もいることがわかりました。Whatが分かっていれば、Howはなんとかなります。これからは思い込まず、まず本人に聞いてみたいと思います」
バイアスを認識し本人とコミュニケーションをとった結果、両者の希望や提案、不安を共有でき、具体的な業務が明確化されました。もちろん、本人のモチベーションも上がったそうです。
ただ「今までの継続で」と任せるのではなく、改めて期待や目標を明確にすることが重要と言えます。
シニア層からは 言い出しにくいこともある
次に多く挙げられたのは、「シニアには意見しづらい」という若手やマネジメント側からのバイアスでした。
「モチベーションが低いと思っていたシニアがいました。これまでの業務の継続なので、私たちも『任せておけばいい』と思い込んでいたのです。しかし、これもバイアスかと思い、情報をこまめに共有するようにしました。すると、積極的にサポートや助言に動いてくれるようになりました。その人も遠慮していたようです」
「バイアス研修を受けた後、自分から『業務で不安なことはありますか?』とシニアの方に聞いてみました。すると、仕事のプロセスでわからなかったことや、代われる業務などがあることがわかり、不安を解消することができました。自然と助け合いの雰囲気も生まれ、距離が縮まりました」
「その人にとっては慣れているやり方でも、とても時間がかかっているのが気になっていました。上から否定するのではなく、思い切って『こんなやり方もありますがどうですか?』とご紹介する気持ちで提案をしてみました。『それは知らなかったが、とてもいい!』と喜んで、意外と受け入れてくれました」
経験豊富なシニア層とはいえ、時代の流れ、業務の変化、ITの進歩など、慣れていないことも多くあるでしょう。また一方で、自分たち年上が口を挟むのは良くない、同僚や(年下の)上司を尊重しようと遠慮して、口を出さない人もいます。
お互いがバイアスを認識したうえで話す機会を作る、提案の形で話してみる、などの工夫は有効だと考える方が多くいました。
再雇用でも「新しいやりがい」で貢献度が高まる
3つめのシニアバイアスは「年上の部下は扱いにくい」というものでした。
「プロジェクトのメンバーを選ぶ際、年齢や経験が多様になるように組みました。議論の前提・土台を整理する手間はかかりましたが、次第にチーム内で補完できる体制になり、心理的安全性が高まった気がします」
「シニア再雇用の際、今までの継続という曖昧な形にせず、これから会社や私たちが期待している役割や、仕事の内容について明確に意見交換しました。『やりがいが感じられるようになった』と前向きに取り組んでくれています」
「扱いにくい」という思い込みから、シニア本人とのコミュニケーションを避けていたり、任せたままにしていたことを止め、本人の希望を聞いたり、期待を伝えたりしたことで「何をしなくてはいけないか」が明確になった例です。
また、シニアの希望をヒアリングする際、「こんなサポートがあれば○○に挑戦してみたい」「○○に取り組むために○○の学び直しがしたい」など、取り組んでみたいこととサポートやリスキリングが必要なことをセットで聞けるような仕組みにすると、成長の可能性が広がります。
シニアバイアスへの対処は3者の意識改革と具体的目標の設定から
このように、シニアバイアスに対しては、マネジメント、シニア本人、同僚など、3者それぞれの対処が必要になります。
バイアスがあるかもしれない、と気づき、少し行動や考えを変えてみてみることで、職場環境も変わっていきます。
次回は、実際にこうしたプロセスを経て、シニア人材の再雇用・活用を積極的に行い、会社の成長へとつなげてきた企業の実例をご紹介したいと思います。
ChangeWAVEでは、ダイバーシティ推進のアドバイザリー、アンコンシャス・バイアスを軸とした組織診断やマネジメント研修、異業種プロジェクトや自律型人材・女性管理職育成などを通して、企業の変革をお手伝いしています。
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