ベテラン活用・企業の取り組み ダイキン工業様 事例紹介
ミドルシニア層の働きがいを高め、事業成長につなげるには?
シニアバイアスをテーマにした連載の第3弾は、先進企業の事例をご紹介します。
シニアバイアス連載記事
No.1 シニア層の活躍を阻む3つのアンコンシャスバイアス
No.2 無意識の年齢バイアスを乗り越え シニア層の活躍につなげる
No.3 ベテラン活用・企業の取り組み ~ダイキン工業様 事例紹介~ ※本記事はこちら
創業以来「人を基軸におく経営」を行い、多様な人材の活躍・育成に力を入れてきたダイキン工業。ベテラン層に対しても早くから雇用延長等でさらなる活躍の場を用意し、チャレンジを後押ししています。
本レポートでは、人事本部ダイバーシティ推進グループ担当課長の今西亜裕美さんにインタビューさせていただいた内容をもとに、同社での具体的な取り組みについてご紹介します。
ダイキン工業株式会社
人事本部 ダイバーシティ推進グループ 担当課長
今西 亜裕美 様
目次[非表示]
「人の可能性を信じる」
強みを活かし、総合力で成長する
海外売上高が約80%を占めるダイキン工業では、グローバル競争力を高めるためにも、ダイバーシティある会社づくりは必須だと考えてきました。
「人のもつ無限の可能性を信じる」「一人ひとりの成長があって初めて企業は発展できる」とし、各人が能力を発揮できる環境・制度づくりに取り組んできたのです。
シニア層の活躍推進にも早くから取り組んできた結果、60歳定年退職時の再雇用率は約9割。多くのベテランが第一線で活躍しており、定年退職後の再雇用期間を終えたあとも「シニアスキルスペシャリスト契約社員」(会社選択による雇用)となっている人材が多くいます。
さらに注目を集めたのが、2021年、再雇用制度の改訂。
希望者全員が、70歳までモチベーション高く働き続けることができる仕組みを作ったのです。
これまでダイキングループの成長を担ってきたベテラン層は貴重な戦力。その能力を事業拡大に最大限活かす、というのが制度改訂の大きな目的でした。
60歳でいったん定年退職にはなりますが、本人の希望があれば最大70歳まで再雇用されますし、会社に貢献する人が評価されるよう、賞与格差も拡大されました。
10年後には4人に1人が56歳以上になる見込みであるという自社の人員構成、高齢者雇用安定法の改正(70歳までの就業機会確保を努力義務とした)といった社会の変化にも目を向けた判断だと言えます。
再雇用制度改訂に向けて、
シニア人材の役割を見直した
ダイキン工業では、制度改訂準備にあたって社内ヒアリングをし、シニア人材の活躍状況を整理しました。すると、以下のような9つの分野に分類できたそうです。
ダイキン工業のシニア人材活躍分類
- 国内で培った技術・スキルの海外での実践・指導・継承
- AI・IoTなどの最新技術を用いた技術革新
- 後進育成やグループ会社などへのスキル・ノウハウ・暗黙知の伝承
- 特定分野のエキスパートとして、これまで培った経験・専門性・人脈を駆使した難易度の高い課題解決や業績拡大
- 開発品質・サービス品質の抜本的向上やコンプライアンスの徹底遵守など、企業としての基盤固め
- 産学・産産連携、ベンチャーとの協創による新技術・新事業の創出
- 全体最適の視点からの提言やルールの徹底指導による、組織力強化・活性化
- SDGs・ESGなどの社会課題解決に貢献
- 国際的な企画やルール、環境保護に関する規制などへの意見参画
こうしてシニア人材活躍状況を整理したところ、改めて、
- シニア人材が豊富な経験やネットワークを活かして社内外の人をつなぐ役割をしていること
- 新たな事業創出へも大きな尽力となっていること
- そうした経験や知識を次の世代へとつないでいく大事な役割をしていること
が明らかになりました。
前回記事(※)でもお伝えしたように、「シニア層は頑固で柔軟性がない」「扱いにくい」「チャレンジしない」といったアンコンシャス・バイアスに捉われていると、こうしたシニアの力を見逃してしまいます。
ダイキン工業の取り組みでは、シニア人材にどんな役割を期待しているのか、自社にとってシニア人材がどんなメリットをもたらしてくれているのか、改めて明らかにすることの重要性を教えてくれます。
ついこれまでの経験のまま、「お任せします」と役割をあいまいにしてしまいがちですが、洗い出したことでその存在と役割の大きさに気づくことができました。
本人と上司、現場との対話と課題共有
次のポイントは、どんな役割を担ってほしいのかということについて、会社と本人が明確に共有しているということです。
例えば、再雇用に際しては一人ひとりが上司と対話の機会を設けています。
上司からは今後の期待を伝える一方で、再雇用者からは率直な気持ちや意向、不安なども話してもらうそうで、対話によって改めて相互理解を深め、業務内容や目標を明確に設定することへと繋がっています。
国内の販売会社で営業経験豊富なAさんは、その実績を活かして海外での指導という新しい任務を任されました。初の海外赴任だったそうですが、アジア地域に営業ノウハウを伝授し、現地の営業力強化に大きな貢献をしています。
また、エアコンの監視・制御システムの開発や運用を長年担当されたBさんは、再雇用後、AIやIOTを学んだ若手と協力して故障予知の高度化に挑戦。業務革新を担っています。
このほか、各部門のライン部長と人事部門がディスカッションをしてシニア人材の活躍に関する課題を整理した上で、部門での取り組みと全社での取り組みを具体化し、さらなる活躍推進につなげるなど、制度改訂というハード面だけでなく、その後の活躍につながるソフト面での取り組みも行っているという好事例です。
周囲とのコミュニケーションを円滑化するために
では、なかなか手をつけにくい課題である、関係性の構築や環境整備はどうでしょうか。
対話を通して期待を伝え、率直な気持ちを話すことは、本人だけでなく“年上の部下”を持つことになる管理職にとっても、関係づくりの大事な機会です。
ダイキン工業では、全管理職対象に、マネジメントや組織活性化のポイントについて学ぶセミナーを実施しているほか、シニア人材に対しても、研修を行っています。組織における自身の役割や貢献の仕方について考え、今後のさらなる活躍につなげるためのものです。
相互理解を深め、本人の目標や役割を共に考えていくことで、シニア人材が力を発揮できる環境づくりをされたと言えるかもしれません。
制度改訂はもちろんですが、それだけでは動かない「無意識のバイアス」を打破する仕組みづくりが重要であると改めて感じました
ChangeWAVEでは
ミドルシニア層の社員が意欲的に働き、今後もチャレンジを続けていただくために
「50代からのライフシフト戦略とエイジング・リテラシー」をテーマとした研修をご提供しています。
研修の目的は
- エイジング・リテラシーを高め、老後のQOL を向上させるポイントを学ぶ
- 新しいチャレンジへの意識づけとピア・サポートを得る
- ご自身の「今」を見える化し、1 を念頭に置いたうえで改善したいことを挙げる
- 今日からチャレンジできること、それを続けるためのアクションにつなげる
こと。
エイジテックベンチャーである株式会社リクシスと
スタンフォード式ライフデザイン・Designing Your Life日本認定講師の知見をもとに作成したプログラムです。
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