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ーリクルートの新たな試みー 人材マネジメントは次の段階へ! アンコンシャス・バイアスの自覚から行動実践につなげる取り組み

2006年という早い段階でDEI専任組織を発足したリクルート。
2021年には「2030年度までに、役員、上級管理職・管理職・従業員のすべての階層で女性比率を約50%にする」というグループ目標を公表し、取り組みを進めています。


リクルート女性管理職比率

(資料:リクルートグループ提供)


2024年4月、女性課長比率は36%に、女性部長比率は24%、女性役員・エグゼクティブ比率は13%と、大きく上昇しました。
その成果の土台には「変化の激しい経営環境の中で、経営理念である『新しい価値の創造』にはDEI推進、つまり、多様なリーダーシップの創出が重要である」という考えがあり、経営陣・事業長のコミットメントや現場主体での計画策定・実行がそれを実現につなげている、と言えます。
 
では、具体的にはどんな取り組みをされているのでしょうか。
今回は、全社横断の取り組みとして特に力を入れておられる、アンコンシャス・バイアスへの対処、多様な人材マネジメントの実践について、
株式会社リクルートの人事、CO-ENインクルージョン総括室・室長の早川陽子様にお話を伺いました。



目次[非表示]

  1. 1.アンコンシャス・バイアスは「理解」から「実践」のフェーズへ
  2. 2. アンコンシャス・バイアスが人材マネジメントのキーとなる理由
  3. 3. DEIを「ワガゴト化」するために



インタビュイー

早川陽子様

株式会社リクルート
人事 CO-ENインクルージョン総括室 室長
早川 陽子 


インタビュアー

鈴木富貴

株式会社チェンジウェーブグループ 執行役員
鈴木 富貴




アンコンシャス・バイアスは「理解」から「実践」のフェーズへ

鈴木:
アンコンシャス・バイアスへの気づきを現場に生かすための管理職研修、「Career Cafe for BOSS実践編」を今年8月にスタートされたそうですね。開催に至った経緯からお伺いできますか?
 
早川様:
リクルートでは、多様なリーダーシップ創出に向けた取り組みのうち「全社横断でバイアスへの対処」というテーマで3つの柱を置いています。

・人材マネジメント基盤にDEIを組み込む
・女性従業員向けのキャリア構築、スキル向上支援
・管理職向けの多様な人材マネジメント支援



このうち、管理職を対象に2015年から実施してきた研修「Career Cafe for BOSS」は、持続的な成長に向けたDEI推進、多様な人材マネジメントの意義を理解し、多様なメンバー育成のマインドセットを学んでもらおうというプログラムで、今期で、管理職のほぼ全員が受講を完了する見込みです。
 
従業員の価値観や働き方が多様化する中で、人材マネジメントの難易度は年々高くなっています。同研修では「DEIの大切さは理解しているが、どのように行動すればよいかが悩ましい」という声が大変多く出たこともあり、次のステップは、研修で得た気づきや知識を、日々の人材マネジメントで実践できるよう支援することだと考えました。そこで、「Career Cafe for BOSS 実践編」として、実践に向けた研修機会を提供することにしたのです。
 
「Career Cafe for BOSS実践編」では、成功体験があるからこそ持ちやすいアンコンシャス・バイアスに気づくとともに、管理職として大切にしたい価値観を明確にしながら、多様な人材マネジメントに向けた自分なりの行動計画を策定する、という形で進めています。知識のインプットだけではなく、講師や、他の参加者との率直な対話を通じて、内省の深まりを感じた人、行動実践のヒントを得た人が多かったと思います。

研修



 アンコンシャス・バイアスが人材マネジメントのキーとなる理由


 鈴木:
そもそも、アンコンシャス・バイアスへの取り組みに焦点を当てられた理由は何ですか。
 
早川様: 
現場に根ざした、組織ごとのDEI推進計画を策定している中で、共通の課題として挙がったのがアンコンシャス・バイアスでした。例えば管理職任用の際に、「意欲」や「覚悟」を問うたり、画一的なリーダーシップのスタイルや、過去の管理職と同じ働き方を無意識のうちに求めていたりすると、結果的に女性の管理職候補が少なくなります。また、判断基準が人によってバラバラだと、能力以外のバイアスが入り込みやすくなります。
このため、まずは、管理職要件を明文化し、2023年度には全社的に導入しました。任用に至るプロセスでバイアスが入り込む余地に対処したのです。
 
鈴木:
その結果、どんな変化がありましたか。
 
早川様 
それまで、個々の管理職ポジションに期待する職務価値・役割は定義されていましたが、候補者選びの段階では何か明文化されたものがあったわけではありません。管理職要件を明文化し、要件に沿って候補をあげてもらったところ、課長職候補数は男性で1.4倍、女性で1.7倍になりました。この数字が明文化導入の効果を物語っているように思います。

​​​​​​​

 
鈴木:
候補を選ぶ、現場リーダーの方々の反応はいかがでしたか。
 
早川様:
「なんとなく重視していたことが、自組織の成長には必要ないと気づいた。」という声が多かったですね。例えば、「24時間対応」や「顧客との頻繁な懇親」など、もともと要件としてあったわけではなく、現在の管理職もそうしているわけではないものも、暗黙的に「こうあらねばならない」と思い込んでいたというようなことです。
明文化した管理職要件で検討し直したら、求める能力が明確になり、女性だけでなく、男性も含めて、見落としていた候補が出てきたわけです。
 
その裏側には、私も含めて、管理職一人ひとりが持っている「自分の成功体験を基準にしたリーダー像」があります。良い意味でのこだわりが、次のリーダー候補を選ぶ上では可能性を狭めてしまうこともある。仕事で成果を出してきたからこそ「こういうときは、こうやるといい」という考え方です。
 
ただ、これらの成功体験は、その人らしいリーダーシップの発揮にもつながっている大切なものです。だからこそ、「Career Cafe for BOSS実践編」では、管理職一人ひとりが大切にする経験や価値観を明確にしたうえで、メンバーに対しては「こうあるべきだ」をはめ込まないよう、不要な無意識バイアスに対処する手法を学び、アクションプランを立てるようにしています。

研修



 DEIを「ワガゴト化」するために


鈴木:
DEI推進は地道に継続していく必要がありますが、人事だけでなく、現場でも「自分に関係があることだ」という意識を持つために工夫されたことはありますか。
 
早川様:
弊社には、自分たちが決めたこと、つまり自分たちがやりたいことは、自ら本気で取り組むカルチャーがあります。ですから、「DEI推進の3カ年計画」は事業長を中心に組織ごと現場主体で策定してもらいました。その過程では、DEI推進が難しい理由が明らかになります。その理由に着目することで解決手段が見えてきました。
                                                                                                         
たとえば「現時点で男性のチームリーダーしかいない」というときに、「どうしたら女性管理職を任用できるのか」ではなく、「そもそも、なぜこの組織のチームリーダーには男性しかいないのか」という視点で見てみる。すると「メンバーには男性も女性もいる」「メンバーからチームリーダーへの任用がボトルネックになっているのかもしれない」「100%解決するのは難しくても、この部分は解決できる」と、道が開けてきます。
 
「管理職要件の明文化」や「DEI推進の3カ年計画」策定を通じて、それぞれの組織がどんな未来を目指すのか、また、その実現に向け、リーダーには何が必要なのか、といった議論ができたことは大変重要だったと感じます。

  
鈴木:
事業の未来を見据え、そこから逆算で考える、というのは当たり前のようでいてなかなか難しいことだと思います。それを実践されているのは素晴らしいですね。
一方、メンバーの方々の「働きがい」という点についてはどんなメッセージを出されているのでしょうか。

 
早川様:
これまでの調査で、弊社では、「働きがい」を生み出している要素として「一人ひとりの”個”が活かされていること」「仕事を通じて機会を得て、力を最大限発揮できていること」であるというのが見えてきました。
多様な”個”を活かす環境が生まれるには、上司が自身のアンコンシャス・バイアスを自覚した上で、個々の価値観を尊重した振る舞いができていることが必須です。一人ひとりの個性や価値観を多様な観点で見て理解するために、アンコンシャス・バイアスの課題には「Career Cafe for BOSS実践編」などの取り組みを通じて、今後も継続して取り組んでいく必要があると考えています。
 
弊社には「価値の源泉は”人”」という考え方がありますが、価値創造サイクルのエンジンとしてのDEIを、これからも全社横断で進めていきたいと思います。
                    

今回は、リクルート様の開放的なオフィスでお話を伺いました。
リクルート・早川様(写真右)チェンジウェーブグループ・鈴木(写真左)


 
鈴木:
DEI推進に取り組むべき、ということは多くの企業で言われますが、どう実践につなげるか、が本当に重要だと改めて感じます。早川様、貴重なお話をありがとうございました。

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