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「学んだだけ」で終わらせない アンコンシャス・バイアス学習を実践に変え、DE&I進捗を測る仕組み


「アンコンシャス・バイアス研修を実施したものの、効果が見えにくい」「学習はしたが、行動に結びついていない」。そう感じられることがあるかもしれません。実際、企業がアンコンシャス・バイアスに対処し、人材マネジメントの改善や組織風土変革につなげていくには、単発の学習に終わらないアプローチが必要です。

2024年、累計受講者が10万人を突破したアンコンシャス・バイアスeラーニングプログラム「ANGLE」。単発の学習に留まらず、組織変革を実現するためには何が重要なのか。

ANGLEの企画・開発をリードし、受講結果をもとにしたコンサルティングを進めてきた、チェンジウェーブグループのメンバーからお伝えします。


目次[非表示]

  1. 1.組織の「変革屋」がアンコンシャス・バイアスに注目した理由
  2. 2.「自分は大丈夫」が一番危ないアンコンシャス・バイアスの「測定」「見える化」で自分ごとに
  3. 3.どこから行動変化を起こすのか構造的な課題を理解する
  4. 4.アンコンシャス・バイアスへの対処を定着させ組織の変化につなげるために



スピーカー

      鈴木富貴

株式会社チェンジウェーブグループ      株式会社チェンジウェーブグループ
代表取締役社長CEO             執行役員
佐々木 裕子                鈴木 富貴




組織の「変革屋」がアンコンシャス・バイアスに注目した理由


ラーニングプログラム「ANGLE」が発売されたのは2018年。企業の「変革屋」として、組織開発・人材育成に携わってきたチェンジウェーブグループが、なぜ、アンコンシャス・バイアスに注目したのでしょうか。

佐々木裕子 (以下、佐々木):
変革のステップ、これまでの「アタリマエ」を疑い、新しいものを創造していくステップにおいては「多様な視点」で検討し、意思決定していくことが必要です。
そのためには、アンコンシャス・バイアスへの対処は欠かせないと考え、2015年頃からこの課題に取り組み始めました。

しかしながら、リサーチを始めると、アンコンシャス・バイアスは、リベラルなイメージがある企業、DE&I先進企業でさえ乗り越えられていない根深い課題だと気づいたんです。


アンコンシャス・バイアス


アンコンシャス・バイアスは、人間の脳が有する、“効率的な情報処理機能”のベースとなるものです。なくすことは難しく、継続的に意識を向け続ける必要があります。
ですから、DE&Iを進めようと、企業で人事制度を変更したり施策を打ったりしたとしても、アンコンシャス・バイアスへの対処がなくては、いつまで経っても物事が変わらないのではないか。「道徳」ではなく「脳の機能が有する情報処理」であることを理解してコントロールする必要がある、と考えました。

そして、唯一気づくきっかけになるのは「あるかどうか」がわかることではないか、と考えたのが「ANGLE」開発のスタートでした。

アンコンシャス・バイアス特徴

「自分は大丈夫」が一番危ない
アンコンシャス・バイアスの「測定」「見える化」で自分ごとに

「ANGLE」には、IAT(Implicit Association Test)という心理学研究で使われるテストを導入しました。受講者のアンコンシャス・バイアスを測定し、定量データで数値化するためです。アンコンシャス・バイアスが「自分にもある」と認識したうえで、セルフチェックや組織観察をしていただき、「自分ごと」として組織やマネジメント、キャリアにもたらすバイアスの影響を見ていただく流れです。
自分にも、周囲にもバイアスがあり、それがどんな結果につながるのか、自分と他者を比較するとどうなのか、といった観点でも理解を深め、個人の行動変化を促していきます。


ANGLEPlusコンテンツ

(ANGLE プログラムより)

※ANGLE企画概要書はこちらから https://angle.changewave.co.jp/download

鈴木富貴 (以下、鈴木):
道徳的観念や差別といったことではなく、「脳の効率的な情報処理機能」と説明したことで、受講者が「受け入れやすくなった」という感想を多くいただきました。
これまではDE&Iやバイアスの話をすると、あなたが悪い、できていないじゃないか、と責められている感じがしたが、皆で気をつける必要があることなんだ、と納得した、という声もありました。
この点については、日本社会心理学会でも事例発表しています。

※日本社会心理学会での発表についてはこちら https://angle.changewave.co.jp/article/presentation_202409

DE&Iは概念的、抽象的、また、一般的な話になると、なかなか進まず、行動にも落とせません。
ANGLEでは、「具体的な課題」として職場でも話し合えるよう、仕組み、構造を理解したうえでコントロールする、ということに留意しています。
受講した方へのアンケートでは、IATによる気づきがあった、という方が最も多く、次いでケーススタディ、ラーニング、セルフチェックなどとなっています。

行動変化グラフ①

行動変化グラフ②



どこから行動変化を起こすのか
構造的な課題を理解する

アンコンシャス・バイアスへの「気づき」は、組織に新たな視点を提供します。ご自身、また周囲に対して「解像度を上げて」見ることでもあります。
しかし、これを本当の変革につなげていくには、継続的な意識・実践が必要になります。

佐々木:
私たちの脳が1秒間に受け取る情報は約1100万件とされています。このうち、意識して処理しているのはたった40件。脳は、溢れる情報を一度に処理できませんから、無意識的にパターン認識で多くを処理していくのです。これが、アンコンシャス・バイアスの仕組み。「こういうパターンが来たら、こう対処しよう」というような、ある種の生存本能のようなものです。

ですから、一度パターンができてしまうと、新たなパターンはなかなか定着せず、揺り戻しが起こります。バイアスへの対処が悪い生活習慣の改善に例えられることからも、変容には時間がかかることを理解していただけると思います。一度やって終わり、ではないのです。

例えば、ANGLEのデータを通し、企業でアンコンシャス・バイアスが顕在化しやすい領域は分かりました。コミュニケーション、機会提供、登用、リーダーモデル、働き方、などです。
これらがどんな構造で多様性を阻んでいるのか、を考えてみたのが下図です。



「男性と仕事」「女性と家庭」の結びつきが強い性別バイアスは、ANGLE受講者のうち85%以上に見られます。仕事に邁進するフルコミットの働き方をしてきた歴史を投影するところもあるかもしれません。

現在、まだ多くの企業では、特に上位職を目指す場合、仕事優先で残業ありきの働き方が暗黙の了解のようになっています。重要なポジションほどハードワークで、働き方改革の治外法権、などと言われることもあります。

ここで「男性は仕事優先」「リーダーは男性『的』」というバイアスが働くと、女性に対して”成長に必要なハードワークをアサインしてみよう”とか、”次のステップに向けてちょっと厳しいフィードバックをしよう”ということ自体が起きなくなります。

これが累積すると、男女で経験値や人脈の差が開くのは当然です。「登用しようとしても適切な人材がいない」「パイプラインが足りない」という現状は、こんなところから生まれています。
役員、部長候補を選出する際でも、自然体で多様性を増すことは不可能です。今まで活躍してきた層、多くの企業では男性が優先的に選ばれがちです。

結果、同質性も高まるわけですが、この傾向に対し、近年では、男女関わらず「ああいう管理職にはなりたくない」と考える若手が増えています。
DE&Iが遅れている企業は、男性も女性も働きにくさを感じる、選ばれない企業になりつつある、とも言えます。

※女性幹部育成とパイプライン強化についてはこちら
https://angle.changewave.co.jp/seminar/special20

アンコンシャス・バイアスへの対処を定着させ
組織の変化につなげるために

DE&Iのスタートに女性活躍を挙げ、アンコンシャス・バイアスへの取り組みを実施している企業は少なくありません。
しかし、単発の取り組みでは、なかなか成果を上げていくのは難しいものです。

佐々木:
DE&Iは地道に進めていく必要があり、担当部門はご苦労されると思いますが、アンコンシャス・バイアスを軸に、複合的に取り組むことをお薦めします。

例えば、多様な人材をマネジメントし、新しいチャレンジが生まれる組織にしたい、ということであれば、自身のバイアスに気づくだけでなく、組織内で固定化している評価や登用の基準自体を変えていく、機会提供を変えていく、という必要があります。それが働き方やリーダーモデルをアップデートすることにもつながります。
あわせて、登用したい人材の育成・研修を進め、ビジネスモデルや組織風土の変革プロジェクトを実施されている企業もあります。

※「アタリマエをぶち壊す」変革の仕掛け ハウス食品グループ様事例
https://changewave.co.jp/2022/03/22/house_innovation2021/
※ダイバーシティ推進から事業変革へ ダイエー様事例
https://changewave.co.jp/2021/04/08/daie_forum/
※多様性で会社を変える 三井住友海上火災保険様事例
https://changewave.co.jp/2021/06/15/hrc_dialogue/

鈴木:
行動変化をより促すために、ANGLE受講後、集合研修、特に管理職層のディスカッションを希望される企業は3割以上いらっしゃいます。

・ANGLE受講データが職場の状況を「見える化」する情報になる  
・データをもとに「具体的な課題」としてマネジメントや機会提供、業務分担等について話し合う機会にできる
・個人の気づきを共有し、マネジメントの工夫につなげられる
といった点が、研修の利点です。

特に組織開発においては、その職場の状況、メンバー等の変数があり、唯一の正解を提示することは難しいと思います。
マネジメントに悩まれている管理職層も多くいらっしゃいますので、同じ階層の方々でディスカッションし、自分たちで考えて答えを出していく、「これをやめましょう」ではなく「こういう行動をとる」「これを実現するために何をしたらよいか、を考える」というアプローチをお薦めしています。
そこに異なる視点を入れる、という意味で、ANGLEのデータや、我々のような外部講師の存在がお役に立てるのではないかと思います。

実際に、ANGLE受講後に役割分担の慣習を見直したり、機会提供する層が変わったり、という変化が現れていますし、登用候補者の顔ぶれが変化してきた、という例もあります。

取組み事例



こうした実践例をさらに広げ、「多様性を力に変える」ご支援をしていきたいと考えています。


アンコンシャス・バイアス対処を継続し、組織の力に変えていくためには何が必要なのか。
「何を変えるべきかが分かる」「どのように変えるか、が分かる」ことを目的とし、チェンジウェーブグループでは、2024年、ANGLEのフォローアップツールともなる、ANGLEplusを開発しました。
ANGLEPlusの概要、利用法などについては次回お伝えいたします。

※ANGLE Plusについて
https://angle.changewave.co.jp/service-plus

ANGLEPlusという打開策

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