アンコンシャス・バイアスからD,E&Iをどう進めるか 〜「活かしあう」組織づくりのために〜
株式会社チェンジウェーブでは、2月15日と20日の2回に渡って「アンコンシャス・バイアス対処からインクルージョンへ〜複数年の取り組みをどう位置付けるか〜」と題したオンラインセミナーを実施しました。
特別セミナー レポート連載
「アンコンシャス・バイアスからインクルージョンへ 複数年の取り組みをどう位置づけるか」
No.1 アンコンシャス・バイアスへの複数年にわたる企業事例
No.2 アンコンシャス・バイアスからD,E&Iをどう進めるか〜「活かしあう」組織づくりのために〜」※本記事はこちら
No.3 アンコンシャス・バイアスからD,E&Iをどう進めるか〜 「活かしあう」組織づくりのために〜」質疑応答
進行はチェンジウェーブ・取締役の大隅聖子が務め、
第1回は「アンコンシャス・バイアスへの複数年にわたる企業事例」をご紹介。
第2回はゲストに株式会社デジタルホールディングスのグループCHRO、石綿純様をお迎えし、D,E&Iの具体的な進め方と戦略の立て方についてお伺いしました。
この記事では第2回のセミナーについてレポートします。
目次[非表示]
- 1.登壇者紹介
- 2.D,E&I推進室発足の背景や目的
- 3.D,E&I推進の5点のポイント
- 3.1.経営者のコミットメント
- 3.2.時代にあった柔軟な働き方
- 3.3.風土・文化・制度の三位一体
- 3.4.D,E&Iを進める組織の多様性
- 3.5.数値化・見える化によるモチベーション維持
- 4.具体的な取り組み
- 4.1.女性活躍推進
- 4.2.男性育児休暇
- 4.3.多様性を活かす力
- 4.4.社員エンゲージメント
- 5.今後の展望
登壇者紹介
株式会社デジタルホールディングス グループCHRO 石綿 純 様
株式会社リクルートの人材メディア領域で営業部門を経て人事部門へ。
グループ人事部長、株式会社スタッフサービス・ホールディングス事業開発部長を経て、株式会社光通信人事担当役員に就任。
2018年に株式会社オプトホールディング(現 株式会社デジタルホールディングス)へ入社し、グループCHROとして人事部門を管掌。
2019年4月より株式会社オプトの取締役を兼務。
D,E&I推進室発足の背景や目的
チェンジウェーブ・大隅(以下、大隅)
本日は、D,E&Iに非常に熱意を持って、またスピーディに取り組まれていらっしゃるデジタルホールディングスの石綿様をお迎えしています。よろしくお願いします。
デジタルホールディングス・石綿様(以下、石綿)
はい、まずは当社のD,E&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の取り組み背景からお話ししたいと思います。
女性活躍における過去の失敗からの学び
当社のダイバーシティ推進はまず、女性活躍からのスタートでした。2010年に「パパママ部」という部活が発足し、勉強会をするなど、社内で複数のプロジェクトが立ち上がっています。しかし、結果的には実働までいかずに終了してしまっています。ここからの学びは、 D,E&Iには経営メンバーがコミットし、責任を持つことが重要だということです。
2019年からは主力子会社で合計4名を女性執行役員に登用・抜擢するも、2年以内に退職、退任してしまうという結果になりました。 女性を登用・抜擢するだけでは女性活躍は進まないことを実感しました。
そこで、女性社員の提言をきっかけに、今度こそ本気で女性活躍を推進しようとCXOらが決意。COO直下にDE&I推進室を設置、COOとCHROの2トップ体制をとり、本格的にスタートしました。
デジタルホールディングスのパーパスとの紐づけ
スタートにあたっては、D,E&Iは経営戦略であるとして、推進する意義を明文化し、社内に発信しました。
具体的には、新しい価値創造こそが一丁目一番地だと定めた当社にとって多様性がその源泉であるとし、パーパス『新しい価値創造を通じて産業変革を起こし、社会課題を解決する』と紐付けました。
また、人事領域とD,E&Iも密接です。HRポリシーでは『一人一人の誠実さと野心をつなぎ合わせ、個と組織の変革を同時に実現する』とあります。多様な価値観と個の尊重を織り込み、D,E&Iと人事ポリシーを紐付けているのも一つの特徴かもしれません。
D,E&I推進の5点のポイント
経営者のコミットメント
経営者のコミットメントとは、行動と言動であると位置付けました。「言ったことをちゃんとやっているのかどうかを見せること」を大切に、やるべきことを6つ挙げています。
時代にあった柔軟な働き方
以前から社員にはノートPCとスマートフォンを支給していました。このため、コロナ禍でもスムーズにリモートワークへ移行できたと思います。当時、ワーキングマザーを中心に時短勤務者が多くいましたが、通勤時間がなくなったことでフルタイム勤務できる人が増え、生産性も上がっています。
「どこで働いてもいい」という点では、現在50〜60人ほどは首都圏在住ではなく、札幌や仙台、福岡、大阪などで仕事をしています。
持続的に能力開発していくために有給休暇を与える「チャレンジ休暇」も定着しつつあります。
風土・文化・制度の三位一体
大切なのは、風土・制度・知識の3つの軸をバランスよく連動させることです。
どんなに知識を入れても、それが運用できる制度になってない場合、あるいはそれを受け入れる風土になってない場合には何も浸透しません。
D,E&Iを進める組織の多様性
D,E&Iは、専任者はほぼ2人しかいない組織ですが、その他に多様な有志メンバーが集まって盛り立ててくれています。
①経営陣の取り組み、②現場の取り組み、③外部とのコミュニケーション。
この3つの視点を意識しながら取り組む形です。
数値化・見える化によるモチベーション維持
D,E&Iは長期戦なので、自分たちの立ち位置や進捗がわかるように、様々なデータを取り始めました。年に1回全社で大きく実施するエンゲージメントサーベイでは1000人近くの人たちが回答してくれます。
具体的な取り組み
大きく分けて4つあります。
女性活躍推進
女性の社員比率は半分ほど、マネジメント層の比率は20%以上ですが、チームマネージャー・部長・役員と分解していくと、上に行くほど比率が下がっています。経営レベルのところで、女性の管理職を増やしていきたいというのは課題の一つです。
男性育児休暇
20日間、約1ヶ月の育児休暇(=チャイルドケア休暇)を、現在はほぼ100%に近い確率で取っていると思います。自社の制度なので結構手厚く、休暇中の給料も100%支給しています。
先日は、経営企画部長が子どもの誕生に伴い2カ月間の男性育休を取得しました。非常に良かったと言っていました。「妻との対話が生まれていい関係になった」とも聞いています。手厚い男性育児休暇制度は我が社の強みとしてもっと推進していきたいと考えています。
多様性を活かす力
アンコンシャス・バイアスのコントロールのため、主力子会社2社で管理職向けのANGLEを受講し、基礎知識のインプットができました。受講後のオンライン研修は、正直な思いを話してくれる場にもなっており、インパクトのあった取り組みでした。
社員エンゲージメント
上記の重点アジェンダを遂行していくことで、社員と組織が成長に貢献し合えると考えます。
今後の展望
様々な取り組みを実行し、素地ができてきたので、2023年のテーマとしては『混じり合って、重なり合って、生かしあう』というインクルージョンの領域を設定しています。
私達が大事にしたい価値観というものを土台に、デジタルホールディングスらしいインクルージョンを考えていきたいです。
5BEATSという、我々が創業以来大事にしている人材観があります。
- 新しい価値創造
- チャレンジ(変革し続ける)
- 楽天主義(プラス思考)
- 先義後利
- 一人一人が社長(社員の幸せ=自立)
続けていくことで素地が変わっていく、そして1人1人との会話が変わっていく、それが全体に波及してグループ全体の風土や文化、制度の3つが融合して変わっていく。そんなことをこれからの数年をかけてやり続けていきたいと思っています。
このあとの質疑応答では、デジタルホールディングス様が積極的に進めておられる男性育休を中心に、ダイバーシティを進める際に注意すべき点、働き方に制約がある人材とその周囲に対する配慮について等、多くの質問が寄せられました。
質疑応答についてはこちらの記事をご覧ください。