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現場が人事部門に求める女性活躍支援策 リコージャパン様 事例紹介

女性経営層・管理職の登用が思ったように進まない、という悩みを抱える企業人事部門の方々は少なくありません。推進策としてキャリア採用を視野に入れながらも、最も力を入れたいのは「社内での育成」ではないでしょうか。
女性のリーダー人材育成に対して中長期的に取り組み、成果を得ていくために、事業部門(現場)との連携は欠かせません。
本レポートでは、女性社員育成のために現場が本当に必要としている施策、人事部門と現場のマネジメントの効果的な連携などについて、リコージャパンの事例をご紹介します。
 
お話しくださったのはリコージャパン株式会社 エンタープライズ事業本部 事業統括センターの卯都木和仁様、エンタープライズ事業本部 流通・サービス事業部の川端沙綾様です。
(聞き手:株式会社チェンジウェーブグループ 代表取締役副社長 大隅聖子)


※2024年7月に開催したオンラインセミナー及び卯都木様、川端様へのインタビューをもとに作成。
​​​​​​​ 肩書きは取材当時。



目次[非表示]

  1. 1.企業の多様性推進と女性の昇進意欲向上に必要なこと
    1. 1.1.多様性推進・女性活躍に向けて課題は明確化してきた 
  2. 2.上司の関わり、共感型支援とは
    1. 2.1.エイカレ参加から本人、マネジメント、人事の関わり方を見つけた
    2. 2.2. リーダーに必要な「本質課題の特定」「組織視点」とマネジメントの関わり
    3. 2.3.「ダイバーシティ推進」と「ワークライフ・マネジメント」を両軸に
  3. 3.早期に育成機会を持つ意味とは
    1. 3.1.人事と現場の連携 早期育成機会の提供


登壇者のご紹介

卯都木 和仁 様

ゲストスピーカー:
リコージャパン株式会社
エンタープライズ事業本部 事業統括センター
センター長 卯都木 和仁 様


川端 沙綾 様

ゲストスピーカー:
リコージャパン株式会社
エンタープライズ事業本部 流通・サービス事業部
オフィスサービス第三営業部 第二担当室
川端 沙綾 様


大隅 聖子

モデレーター・講師:
株式会社チェンジウェーブグループ
代表取締役副社長COO 大隅 聖子


企業の多様性推進と女性の昇進意欲向上に必要なこと


多様性推進・女性活躍に向けて課題は明確化してきた 

第一部では、チェンジウェーブグループの大隅聖子より企業の多様性推進についての現状や育成に対する課題をお伝えさせていただきました。
 
企業の多様性推進は、以前にも増して強く注目されています。
「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」という目標も掲げられていますが、実現のためには、複合的な課題を地道に解いていく必要があります。
弊社はダイバーシティ推進全般のアドバイザリーをさせていただくほか、経営層候補の育成研修、メンタリングなども担当しますが、マネジメントのスタイルやリーダーに求められるものなどが大きく変化しており、課題も明確になってきたように感じています。
 
その中でも、企業様からのご相談に共通する課題として「アンコンシャス・バイアス」があります。
チェンジウェーブグループが提供しているプログラム「ANGLE」では、バイアスをテストで測定し、数値化することができます。現在10万人を超える方に受講していただきました。


測定テスト(IAT)による性別バイアスの結果


図の調査母体は7万6000人ほどです。女性と家庭、男性と仕事を無意識のうちに結びつけるジェンダー・バイアスが強い方は、若干ですが、女性の方が多くなっています。
 
このアンコンシャス・バイアスが職場での「コミュニケーション」「機会提供」「登用」にどう影響するのか、本日は詳しくお話しできませんが、「経営層」「管理職」「リーダー人材」など、階層を分けて複合的に対策を打っていかないと、どんな人事施策を立てても結果につながりにくい、ということになります。
 
女性には、長く仕事を続けたいという継続意欲が強くある一方で、「現在の職場で働き続ける」ことに不安を抱えている、というデータがあります。その不安を打開するためには、働き方を改革する、生産性を上げるなど、マネジメントや評価方針なども含めて「変化する努力」が社員に見える企業である必要があります。
 
また、総合職女性については、企業の中核的な仕事を経験した女性ほど、管理職への昇進意欲を高く持ちやすいというデータもあります。この点でも、人事と現場が連動することが求められると言えます。


上司の関わり、共感型支援とは


エイカレ参加から本人、マネジメント、人事の関わり方を見つけた

 
第2部では、リコージャパンの卯都木様にご登壇いただき、女性活躍の取り組みについてお話いただきました。
 
大隅:
では、本日のゲスト、リコージャパン様をご紹介します。
リコージャパン様は、2017年、弊社が営業職の女性リーダー人材を対象に開催している変革体験型の異業種研修「エイジョカレッジ(以下エイカレ)」に参加してくださいました。参加チームは見事特別賞に輝いています。
本日は、当時参加してくださった川端様と、エイジョに伴走・支援された上司である卯都木様にお越しいただき、「リーダー人材を育成するための上司の関わり」「人事部門との連携」についてお話しいただきます。
 
 
上司や営業職の16時退社を実現し、特別賞を受賞
 
卯都木様:
2017年、エイカレに参加したリコーチームは、当時政府の施策であった「プレミアムフライデー」をもっと進め、「プレミアムエブリデー」と題した実証実験を行いました。フレキシブルな働き方は今でこそ社会に浸透していますが、当時はコロナ禍前で時短勤務も当たり前ではない情勢です。営業職とその上司が、9時から16時までの勤務を実施するという実験で、かなり画期的な取り組みでした。
お客様のご理解もいただきながら、残業時間平均22時間削減、売上比250%という大きな成果を生み出しました。
当時、有識者審査員から「16時に退社しても時短と呼ばれない未来は不可能ではない」と高く評価いただきました。


 リーダーに必要な「本質課題の特定」「組織視点」とマネジメントの関わり

 
「現場の課題を深掘りする」「それを解決する実験を『実践する』」というエイカレを経て、参加メンバーは視野が広がり、組織視点を持てるようになりました。リーダー人材には必要な力です。また、私が必要だと感じたマネジメントの関わりは以下のようなことです。
 
【横断的関わり】
・事業部、組織の垣根を越え、皆でベクトル合わせを行う
・全社の取り組みテーマを確認し、本社と連携して補完し合う
・良い取り組みは共有し、スポットを当てる
・社外との情報交換の場を持ち、課題を共有して解決に繋げる


【育成面での心がけ】
・メンバーの成長度合いを確認しながら成長の場、交流の場を作る
・主体はメンバーであり、上司は支援役であるため、手出しはしない
・メンバーが困った時はアイデアレベルでサポートする
・自分に関わるメンバーだけでなく全体を俯瞰してサポートする


「ダイバーシティ推進」と「ワークライフ・マネジメント」を両軸に

 
多様な人材が活躍できる職場環境をつくるため、リコージャパンでは「ダイバーシティ推進」と「ワークライフ・マネジメント」を両軸に、継続的な取り組みをしています。
中には現場の事業部レベルでチャレンジしているものもありますが、現場の課題を抱え、会社の制度や仕組みを確認しながら取り組む、といった点で、エイカレで培った力が役立っているのではないかと感じます。ワークとライフを多角的に見て、現場の視点と組織の視点、両方で解決していく必要があるからです。
 
現在、現場が「実現する姿」と宣言している到達点は、「全ての社員が自身に最適な形で活躍する会社を作る」というところです。
そのためには、個人が持つ多くの要素のグラデーションを認めた支援を行うことが必要であり、個人に適した支援の充実と、個人と会社の思いを結ぶ「共感型社員活躍支援」を行っていくことが大事だと打ち出しています。
 
メンバーの気持ちを汲み取りながら、これをぜひ仕組み化していきたいと思いますし、本社と連携し、良い取り組みの全社展開を行うようなことも視野に入れたいと考えています。


早期に育成機会を持つ意味とは


人事と現場の連携 早期育成機会の提供


大隅:
では、リーダー、管理職となる女性の育成、という面でお二人にお伺いします。
川端さんがエイカレに参加されたのは6年前(2017年)で、かなり早期の教育機会だったかと思いますが、振り返ってどうお感じになりますか?
 
川端様:
エイカレは「受講する」という受け身では成り立たず、上司や管理部門の方と「一緒に参加している」実感がありました。異業種研修だったということもあり、社内外を問わず、様々な立場の方とお話ができたことで視野が広がり、自分のキャリア・イメージも、少しずつ描けるようになりました
 
大隅:
キャリア・イメージが変わられたのですか?
 
川端様:
当時、当社内にはまだあまり女性管理職の方がおらず、すべてを完璧にできないといけない、という思い込みがあったように思います。
ですが、他社のエイジョに出会って、様々なリーダーシップやワークライフ・マネジメントがあることを知り、自分の強みを活かして自分なりに頑張ればいいんだ、ライフを大事にしながらワークもやっていける、と感じられたことは大きかったと思います。
 
大隅:
卯都木さんは早期の機会提供についてどのようにお考えですか?
 
卯都木様:
意識するところから人は変わりますので、なるべく早い段階で管理職という立ち位置をイメージする機会があると良いと思います。いつまでに部長、課長、と逆引きでシナリオが描けますし、そのために上司が支援すべきことも明確になります。
全ての社員が管理職になる可能性があるわけです。環境や育成プログラム、本人の意識、と、様々なものが関連しますが、なるべく多くのメンバーにチャンスとなる場を作っていきたいと考えます。
 
大隅:
上司や人事部門はどのように関わるとよいでしょうか。
 
卯都木様:
その人が目指す姿を実現するためには、その人にあった成長支援が必要になります。どのタイミングでどこまで行こうかというプロセスを共有し、一緒になってベクトル合わせをする必要があります。一人ひとりに合わせて関わっていくのは現場の上司の大切な役割ですね。
 
人事部門との連携としては、優秀な人が優秀さを発揮するための環境をいかに構築していくのか、会社としてサポートしていける仕組みや風土を作り出すことが重要だと考えています。
ただ、短期で成し遂げられることではありませんから、人事部門にお願いしたいのは、とにかく継続してほしいということです。その力を持っているのは人事部門だと思いますので
 
 
大隅:
現場、本社、人事、それぞれに動きは違いますが、従業員の成長、ひいては会社を良くしたいという想いは一致していますね。
私共も、そのハブになれるようなご支援ができたらと思います。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。



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