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D&I推進の速度と社内の「納得感」を上げる! 鍵はアンコンシャス・バイアスの「数値化・可視化」にあり [H Rカンファレンス2022レポート]

ダイバーシティ推進において近年重要視されているのが、アンコンシャス(無意識)バイアスに対する研修や学習です。「無意識」バイアスはその言葉の通り、本人が自覚しづらい先入観、思い込みのようなもので、「育休を取る男性は昇進に興味がないのでは」「子どもがいる女性は仕事を減らした方がいいのでは」など、自分の判断だけで相手の仕事に影響を及ぼしてしまうことがあります。多様性を受け入れていくには、この無意識バイアスに気づき、意識的に修正していくための学習が必要になります。


本レポートでは、ダイバーシティ推進に積極的に取り組み、先進的な活動を行っているパナソニック コネクト株式会社 執行役員 常務の山口有希子氏(CMO/DEI担当役員)に、ダイバーシティ推進に必要な学びと取り組みのポイントについてお話を伺います。

聞き手は、チェンジウェーブ・取締役の大隈聖子です。


※2022年5月開催の「日本の人事部・HRカンファレンス2022春」で行われた対談をもとに作成しました。


目次[非表示]

  1. 1.登壇者のご紹介
  2. 2.ダイバーシティ推進とアンコンシャス・バイアス学習の重要性(パナソニック コネクト・事例より)
    1. 2.1.性別バイアス
    2. 2.2.年齢バイアス
  3. 3.パナソニック コネクト(株)の取り組み(山口様より)
    1. 3.1.研修だけでなく現場での自走を目指す
  4. 4.経営戦略の大前提にDE&Iを位置付ける重要性


登壇者のご紹介

パナソニックコネクト社 山口さま

パナソニック コネクト株式会社
執行役員 常務 CMO/DEI担当役員
山口 有希子氏


株式会社チェンジウェーブ 取締役
大隅 聖子

ダイバーシティ推進とアンコンシャス・バイアス学習の重要性
(パナソニック コネクト・事例より)


チェンジウェーブ・大隅 (以下、大隅):

パナソニック コネクトは、D,E&I(Diversity, Equity and Inclusion)の活動に早くから取り組んでこられました。

今回、チェンジウェーブが提供する無意識バイアスラーニングツール「ANGLE」(※1)を導入していただき、そのデータも活用しながら学習を続けていらっしゃいますので、人々の無意識バイアスをいかに意識的に変えることができるのか、数値を見ながらお話ししていきたいと思います。

※1「ANGLE」では受講者の無意識バイアスを測定、数値化しています。無意識がゆえに自覚しにくい無意識バイアスについて、自分自身や所属部門の数値をもとに「知り」「気づき」「コントロールする」手法を学ぶ実践型のラーニングツールです。


性別バイアス

最初に性別バイアスで区切っていきましょう。性別バイアスとは、男女の性差で役割を分けたり、「女性は仕事より家庭を優先する」などと思い込んでしまったりする先入観を指しています。

まずIAT(※2)というテストで性別バイアスを測定すると、パナソニック コネクトの管理職で「女性=家庭、男性=仕事」という性別バイアスが強いとされるのは34%程度。ANGLE導入企業の管理職とほぼ同じ割合でした。

※2 IAT:Implicit Association Test。ハーバード大学の研究者らが開発した、無意識バイアスの測定法。チェンジウェーブでは、IATの国内第一人者である潮村公弘教授の監修を得て、IATを日本向けに独自開発しました。


しかし、注目されるのはこの後です。

職場において「男性=リーダー、女性=サポート」という言動をとる管理職がどのくらいいるのか問うたところ、パナソニック コネクトでは他社の3分の2程度だったのです。

無意識のバイアスをなくすことはできませんが、職場でのコミュニケーションや業務分担を決めるうえで出すのは良くないときちんと意識され、コントロールしているということです。

多様性を受け入れて仕事をしていくには、自分が先入観を持っていることに気づき、意識的にそれを判断に持ち込まないようにするということが必要です。パナソニック コネクトでは、その学びを続けてきた成果が、こうして現れていると言えます。

無意識バイアスは、学習によってコントロールすることができるのです。


年齢バイアス

一方で、日本企業では、シニアに対して良くないイメージを持つ年齢バイアス、若手に良くないイメージを持つ(年功序列)年齢バイアスも見られます。

こちらについても、パナソニック コネクトでは「年齢で判断することは避ける」という結果が他社の管理職より強く、「意識的に判断している」という学習の成果が見られました。

無意識バイアスは誰しもが持っており、パナソニック コネクトの方々が特別なわけではありません。繰り返しの学習の結果が職場でのバイアス防止に役立っているということです。



パナソニック コネクト(株)の取り組み(山口様より)


研修だけでなく現場での自走を目指す


山口様:

パナソニック コネクトでは、DEI活動としてDiversity, Equity and Inclusionに取り組んでいます。3階層で取り組むビジネス改革の1階、基盤として位置付けています。



hrc2022_コネクト様資料1


山口様:

どんなに良い改革であっても、会社の風土が健全でなければ機能しません。ダイバーシティは、ビジネスと別の取り組みではなく、ビジネスの根幹となるものだと考えています。なぜDEIが必要かと話す時も『何をおいても妥協できない人権の問題』と必ず説明しています。


hrc2022_コネクト様資料2

山口様:

もちろん、企業の競争力の向上にも必須。DEIがなければ、企業の存亡にかかわると思っています。


パナソニック コネクトでは2017年からDEIに着手。マインドセットの改革、ジェンダーギャップの解消、事業場自走と3つのカテゴリーに分けていますが、そのフェーズも年々変化し、取り組み内容も拡大してきています。


山口様:

最初は理解や意識改革から始まりましたが、実際に活動をしていくと、さらに必要なところを発見します。その度に私たちもまだまだだと痛感しますが、課題を見つけたら対策に乗り出す、という感じで、研修等だけでなく『事業場自走』と呼ぶ現場での実装を重視しながら行っています。今年はさらに介護などにも取り組む予定です。



山口様:

現場が変わらないと意味がない。それが私たちの『事業場自走』という活動の特徴です。各事業部に推進リーダーを決め、推進チームやリーダーがそれぞれの事業場独特のプログラムを走らせて、事業部ごとに面白い取り組みもしています。事業場同士が情報交換しさらに互いに学び合うという活動を行なっています。

こうした取り組みによって、毎年行われる従業員意識調査ではDEI関連項目が大幅に改善。上から指示したのではなく、一人ひとりが実感しながら全社で進めてきた成果だと言えます。


hrc2022_コネクト様資料4

山口様:

当社では、意思決定における女性の割合を2030年に23.9%、2035年に30%達成を目標にしています。この数値に向けて採用活動、昇給、昇格をいかに変えるのか、アクションに落とし始めました。DEI推進体制はCEOのリードの元、CFOの西川とCMOの私、そして各事業部にいるCHAMPSというリーダー、DEI推進室のメンバーが共に協力をして進めています。継続は力なりと信じ、チャレンジの真っ最中です。


経営戦略の大前提にDE&Iを位置付ける重要性


大隅:

山口さんは「どんなに正しい経営、正しい戦略を立てても、風土がなければ成功しない」とおっしゃっておられます。どのように社内に語りかけているのでしょうか?


山口様:

まず大事なのはトップの本気度だと思います。CEOの樋口がカルチャー改革を一番の旗振り役でやっており、常に様々なシーンで発信をしています。そして体現もしています。

最大のマイノリティが女性なので、まずは女性の問題に取り組んでいますが「なぜ女性ばかり?」と言われることがあります。

しかし、DEIで大事なのは、Equityです。「公平性」と考えた時、例えば全ての人に同じサイズの自転車を与えたとしても、全員がうまく乗りこなせるわけではないですよね。 中には足が届かない人、逆に足を持て余す人、ハンドルが高すぎると感じる人、逆に低すぎると感じる人、様々な「不都合」を感じる人がいると思うんです。 その状態を果たして「公平」と言えるのか。その人に合ったサイズの自転車を与えて、はじめて「公平」と言えるのではないか。 そういう視点で一人ひとりを考えると、比較的ライフイベントの多い女性に配慮した方法を考えていくことは重要だと思っています。

妻が専業主婦、というのが当たり前だった時代の男性の働き方から、多様化した時代の働き方にシステムを変えていかないといけない。事例をたくさん作らないといけないと思うのです。セミナーを開催し、アンコンシャス・バイアス研修もそうですが、自分の考え方が時代に即していないのではないか。当たり前だと思っていたけど令和では違うのでは、と危機感を持ってもらいたいですね。


大隅:

どこで誰が気づくかわからないからこそ、多くの手を打たれているのですね。


山口様:

1つのプログラムで変わるなんていうことはありません。人事のシステム、教育、さまざまないろんなことを複層的にやっていかなければ変わらない。

しかし、根幹の考えは、「企業の柱として、企業が強くなるために絶対的に必要なんだ」というものがあることが重要だと思います。


大隅:

DE&I推進の中で、アンコンシャス・バイアスはどう位置付けていますか?


山口様:

大変重要です。広く社員全員にトレーニングをしようと思っていますし、マネージャー研修ではさらに強化しようと思っています。やはり気づいてもらうことが重要です。

DEIは、マイノリティがどういう思いを持っているのかに気づくということです。

「自分は大丈夫」だと思っている人がほとんどですが、私も含め「人は偏りがある」ということを発見し、自分の行動を意識してコントロールしていく。私は、カルチャーは職場の空気だと思います。ですから、みんなが意識していかないと良い空気にならないんですよね。

バイアスを認識したうえで、今はこちらに動くべきだとコントロールする。非常に重要な研修だと思っています。毎年強化すべきことを見つめ直し、引き続きアクションに移していきたいと思います。


大隅:

その通りですね。継続して意識を向け続け、行動に移していくことが本当に重要です。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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