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なぜ女性経営層が増えにくいのか ~構造を変え、登用を前進させる方法とは~

はじめに

「女性管理職は増えてきたが、部長・役員にはなかなか登用できていない」。
経営層やサクセッションプランを担う人事ご担当者から、こうした声を多く伺います。
 
高いポテンシャルを持つ人材はいるのに、なぜ登用が進まないのか。
「経験が不足している」「自信がない」…それだけでは崩せない、構造的な壁があります。
 
チェンジウェーブグループは15年以上にわたって大企業のリーダー育成に携わり、500名以上の経営層輩出に伴走してきました。
本稿では、企業現場で見えた課題を整理し、女性幹部登用を前進させるために必要な視点と取り組みを考えます。




      

株式会社チェンジウェーブグループ     
代表取締役社長CEO             
佐々木 裕子  


目次[非表示]

  1. 1.内部登用が伸び悩む現実~パイプラインの分断
  2. 2.課長から部長へ、役割の質的転換に注目する
  3. 3.アンコンシャス・バイアスが構造を固定化する
  4. 4.3つのアプローチで登用構造を変える
  5. 5.女性経営幹部登用を前進させる、設計と実装

           

内部登用が伸び悩む現実~パイプラインの分断

2023年に政府が掲げた「プライム上場企業における女性役員比率を2030年までに30%以上にする」という数値目標、『203030』。現時点では、上場企業の8割強が女性社外取締役の起用によって目標を達成しています。
 
一方で、本来重要視されるべき社内からの登用は、依然として伸び悩んでいます。
プライム上場企業の役員約2万1千人のうち、社内出身の女性役員はわずか369人。1.7%にとどまっています。

女性役職グラフ


2022年の調査では、従業員数1000名以上の企業における部長級の女性比率は6.7%。男性部長20万人に対して女性部長は1.5万人です。
課長級の女性比率は11.5%ありますが、部長への昇格で男女の差が大きく開いてきます。
課長から部長に昇格する割合を見ると、男性では2.4人に1人が昇格しているのに対し、女性は4.3人に1人にとどまります。
この数字が示しているのは、母数の問題ではなく、昇格プロセスにおける構造的な差です。
 
ここで重要なのは、「数の差」とそのまま捉えるのではなく、昇格率・登用設計の構造そのものをどう再設計するかという点です。
制度整備や意欲の喚起だけでは届かない、パイプラインの戦略的な設計や人材戦略への繋ぎ込みが、今まさに求められています。


課長から部長へ、役割の質的転換に注目する

なぜこのような分断が起きるのか。
まず一つには、役割期待の質的な転換が挙げられます。
 
課長職に求められるのは主に業務遂行力や現場マネジメント力ですが、部長以上になると「経営視点」「部門間連携」「経営層との対話力」といった力が必要とされます。
この差を埋めるために有効な経験――例えば経営層との接点や社内人脈構築、部門横断の視座を得る機会などは、意図的に設計しない限り、女性に対して少なくなる傾向があります。
 
また、管理職候補として成長するために、難易度の高い仕事や部門横断プロジェクトなど、いわゆる「ホットジョブ」への参加はカギとなりますが、当社プログラム(ANGLE Plus)受講者のデータでは、ホットジョブを担うのは男性に偏っている、また、8割以上が長時間労働であるという結果が出ています。
「長時間労働でなければ幹部は務まらない」という固定観念やイメージが組織内で根強いと、育児中や介護中の女性は「私には無理」と諦めてしまい、チャレンジ意欲も削ぐことになります。



アンコンシャス・バイアスが構造を固定化する

さきほどお伝えした「管理職=長時間労働」「ライフイベントがあると管理職は無理」も一例かもしれませんが、企業において、評価する側にも評価される側にも「アンコンシャス・バイアス(無意識の思いこみ)が存在します。
 
当社のアンコンシャス・バイアスプログラム(ANGLE)で8万人超を調査したところ、9割近くの人が「男性=仕事」「女性=家庭」というバイアスを持っていることが分かりました。
この無意識の思いこみが、「重責を担うには早いのでは」「家庭との両立は難しいかもしれない」という登用や育成におけるブレーキとなり、本人の側にも「私には無理かもしれない」という心理的ハードルを生み出します。
 
両立支援制度が整ってきた今でも「両立はできても、登用では不利になるかもしれない」という”キャリアペナルティ”への不安は残っています。
結果、経験の差が蓄積され、意欲も揺らぎ、登用にアンコンシャス・バイアスが影響する。将来的に役員候補と見なされるリストに女性が入らない――そんな“負の再生産サイクル”が起きています。


3つのアプローチで登用構造を変える

では、その壁をどう越えるのか。

ただ、女性のほうが、機会提供の累積が少なく、実力が同じでも「自信がない」「躊躇が多い」のは確かです。
自然体でやっていても、決して目標には届きません。
 
一例として、3つのアプローチをご紹介します。いずれもチェンジウェーブグループでプロジェクト、研修としてご提供しているものです。

この15年の幹部育成を振り返って思うのですが、期待と機会さえあれば、見違えるように成長するハイポテンシャル人材は、男女ほぼ同じ割合で存在します。

 
① これまでの「アタリマエ」を再定義する

長時間労働が当たり前、夜遅くまで働けないと管理職は務まらない――そんな固定観念を本気で壊し、パフォーマンス重視の新しい管理職像を作ること。管理職登用の要件を明確化・可視化したことで候補者数が1.7倍になった企業もあります。これまで候補に挙がりにくかった人材が見えてくることで、登用も変わり、企業の変革力も増していきます。


② 「逆算型」での目標設定とOff JT/OJT連動型プロジェクト

登用候補に「必要な経験」が届いていないなら、それを意図的に設計し、逆算で育成と機会提供を紐づける必要があります。
まず、女性幹部輩出ターゲットを数字と時間軸で明確化し、タフアサインと登用タイミングを逆算。OJTとOff-JTを連動させた複数年計画を策定します。研修や1on1、スポンサー提供、登用タイミング管理などを通じて候補者の実績と自信を積み上げていきます。
成長スピードを上げるための研修については改めてお伝えしたいと思います。


③ アンコンシャス・バイアスの可視化と組織的マネジメント

登用段階での無意識のバイアスを排除し、実績とポテンシャルを評価する仕組みを整えることが、部長・役員登用の場面では特に重要です。
バイアスがあるのは何となく分かっている、という状態では改善が難しいため、「誰にでもあるもの」として前提に置き、組織として向き合うことが不可欠です。
 
部門単位での偏り診断、役割分担・機会提供・登用時のバイアス管理、マネジメントの自分ごと化——
こうした取り組みを継続的に行うことで、「評価・意欲・経験」が一致する仕組みに近づいていきます。



女性幹部排出ポイント



また、持続的にパイプラインを構築するためには、2つの施策を同時に実施しておく必要があることもお伝えしています。

パイプライン育成



女性経営幹部登用を前進させる、設計と実装

“誰を育てるか”だけでなく、“どのような経験を通じて、いつ、どのポジションへ導くか”育成・機会提供・登用までの一連のプロセスを戦略と結び付けて設計し、実行すること。
これまで数多くの現場で、人事の皆さまと共にその問いに向き合ってきました。

そしてその動きは、経営トップの理解とコミットメントなしには成立しません。
経営層との共通言語を持ち、パイプライン設計を経営戦略に接続していくことは不可欠です。私たちが、経営層の方々とも議論を重ねながら企業変革に伴走してきたのも、そうした背景からです。
 
自社の状況・文脈・風土をふまえて登用までの構造を再設計し、着実に手を打つこと。
それは「見えない壁」を可視化し、壊し、未来の多様な経営チームづくりにつながると確信しています。
 
中核の意思決定層が多様になる意義は本当に大きい。
この15年、変革屋をやってきて強く確信していることです。
本稿でご紹介したアプローチは、いずれも実際の企業現場で成果を上げてきたものです。皆さまの課題に即した形で再設計を共に考え、変化の波を共に起こしていけたらと考えています。
 
 
■チェンジウェーブグループ変革DEIソリューションご案内
 https://changewave-g.com/service/
 
■異業種女性幹部育成プログラム「GET」
 ―経営人材への一歩、成長の速度を上げる伴走型プログラム
 https://changewave-g.com/news/announce/get2025_2/

  ※10月スタート、第3期の参加者を募集中です。(一社1名様からご参加可能)


【お問い合わせ】
 株式会社チェンジウェーブグループ 
 変革ソリューション本部 変革DEI事業部
 https://changewave-g.com/contact/dei/



※本記事の内容は2024年10月に開催したオンラインセミナー「女性幹部・リーダー育成とパイプライン強化~次世代の部長、役員を育てるために~ 」の中で佐々木が詳しくお伝えしています。

セミナーのアーカイブ視聴はこちらから

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  オンデマンド配信セミナー「女性幹部・リーダー育成とパイプライン強化 ~次世代の部長、役員を育てるために~」 本セミナーでは、日本の人材開発・タレントマネジメント分野をリードする企業で長年「経営人材育成研修」を実施し、現在も大企業の社外取締役として経営に携わる、弊社代表の佐々木裕子です。豊富な実績をもとに、貴社の女性幹部育成に向けた次の一手を見つけるお手伝いをいたします。 ANGLE | アンコンシャス・バイアスを学び行動変容を促すeラーニングツール | 株式会社チェンジウェーブグループ



佐々木裕子
佐々木裕子
(株)チェンジウェーブグループ 代表取締役社長 CEO 東京大学法学部卒。日本銀行を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーで同社アソシエイトパートナーを務める。2009年株式会社チェンジウェーブを立ち上げ、企業の「変革」デザイナーとしての活動を開始。変革実現のサポートや変革リーダー育成、個人や組織、社会変革を担いつつ、複数大手企業のダイバーシティ推進委員会有識者委員にも就任。自身の子育てに加え、愛知県に暮らす両親の介護も始まり、2016年株式会社リクシスを酒井と共に創業。多様性推進の目的と現実を理解しながら、画期的な両立支援の在り方を定義する。

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